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大阪高等裁判所 昭和48年(ム)7号 判決

再審原告

河東一郎こと

鄲大天

右訴訟代理人

松本浩

再審被告

永藪正雄

右訴訟代理人

押谷富三

辺見陽一

主文

本件再審の訴を棄却する。

再審費用は再審原告の負担とする。

事実《省略》

理由

再審被告(原告)と再審原告(被告)との間の建物収去土地明渡等請求事件(大阪地方裁判所昭和四四年(ワ)第五七三四号事件)において、昭和四五年三月二六日再審原告敗訴(ただし一部分勝訴)の判決があり、これに対し再審原告から当高等裁判所に控訴を提起し(当庁昭和四五年(ネ)第五四八号事件)、昭和四七年三月二一日控訴棄却の判決が云渡され、更に最高裁判所に上告の申立がなされたが(同庁昭和四七年(オ)第七〇三号事件)、同年一〇月一三日上告棄却の判決が云渡されて、第一審判決および原判決(控訴審判決)が確定したことは、前記訴訟事件の記録によつて明らかである。

そこで本件再審の訴が適法かどうかにつき判断する。

民事訴訟法第四二〇条第一項第九号にいう「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したとき」とは、当事者が主張した攻撃防禦方法の判断、または当事者が裁判所に職権調査事項の調査を促した場合におけるその判断を、判決理由中に明記せず、そのため判決の主文に影響がある場合をいうと解するのが相当であるところ、本件の場合、再審原告が再審事由として主張するところは単に原判決の事実認定、判断を攻撃するに止まり、前記規定に該当しないこと明らかである。

なお仮に原判決に前記規定に該当する判断遺脱があつたとしても、判断遺脱のような再審事由の存在は、その事柄の性質上、通例判決正本の送達を受けてこれを閲読することにより知りうべき筈のものであるから、特段の事由のないかぎり、当事者において判決正本の送達(本件の場合は、控訴審判決正本の送達)を受けた当時に再審事由の存在を知つたものと推定することができる。したがつて、本件は、当事者が判決確定(上告棄却の判決云渡)前に再審事由の存在を知つていた場合にあたることになり、このような場合における再審の訴の提訴期間は、判決確定の日から始まるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和四五年一二月二二日判決参照)。そうだとすれば、原判決が確定したのは、前記のとおり昭和四七年一〇月一三日であるところ、本件再審の訴が提起されたのは、昭和四八年八月三一日であること記録上明らかであるから、本件再審の訴は、民事訴訟法第四二四条第一項に定める再審期間(三〇日)をはるかに徒過しているものというべきである。

以上の次第により、本件再審の訴は、いずれにしても不適法であるから、これを却下することとし、再審費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(浮田茂男 中島誠二 諸富吉嗣)

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